砂埃のある舗装されていない道路の先にその家はあった。ムシカ元ウルグアイ大統領の首都モンテビデオ郊外にある自宅である(上記写真)。
ムシカ元大統領は、質素な家に暮らして、自分で自動車を運転して大統領として通ったこともあると伝えられる。自宅前には、警備のためのプレハブ小屋はあったものの、塀は低く、誰でも簡単に乗り越えられる。塀の低さは、国民との距離の近さに比例するように感じた。
ムシカ氏は、2010年から2015年までウルグアイ大統領を務め、本年5月に亡くなった。その暮らしぶりから「世界で一番貧しい」大統領として日本でも大きく報道された。
ムシカ元大統領の根本にあるのは、「政治家は庶民と同じ目線で生活しないといけない」という考えである。庶民の生活を向上させるには、庶民の苦労が体感できないということであり、言われて見れば本当に納得させられる。
世界の大統領官邸は豪華絢爛な建物であり、その中で国賓を招いた晩餐会が開かれている。庶民の暮らしからは程御遠い。豪華絢爛な官邸や晩餐会は不要であると思う。警備などはしっかりとした建物に住んで、せいぜい1人1万円程度の食事会でよいと思う。
さて、ウルグアイというとどんなイメージを持つだろうか。南米のサッカー王国、関税引き下げのためのウルグアイランド…。あまり思いつかない人も多いかもしれない。
しかし、ここは中南米で卓越した点が多数ある。
第一に、治安の良さである。
中南米では、貧富の差の大きさや麻薬マフィアの跋扈で、治安が悪化している国も多い。しかし、ウルグアイは貧富の差も比較的小さく麻薬マフィアの影響も(なくはないが)小さいとされる。
モンテビデオの街を歩いていても、治安の悪いい地域は多くはない。中南米を旅行する際の緊張感は感じられないのだ。
第二に、民主主義の進展度合いである。
中南米というと民主主義的に遅れているというイメージの人も多いかもしれない。しかし、ベネズエラやニカラグアを除き、民主的な大統領選挙が挙行され、一応平和裏に政権交代は起きている。その点では、中東やアフリカの多くの国々よりも民主主義は進展しているといってよい。
その中でも、ウルグアイは、1985年の民政移管以降、特に支障なく大統領選挙が行われ、政権交代も実現してきた。治安の良さの基盤になっているといってよい。
第三に、腐敗の少なさである。
ムシカ元大統領の質素な暮らしが象徴しているように、権力について自らの懐を肥やすということが少ないのだ。
腐敗の少なさは、現地でのビジネスのしやすさにもつながる。
日本では、中南米そのものがあまりニュースにならない。ましてやウルグアイについては報道されない。
しかし、南米大陸のビジネスの拠点として大いに発展の可能性があると思う。今後是非とも注目したい。